今月の読書会で私はドストエフスキーの「地下室の手記」をご紹介する予定で準備しています。今回は、第二部について少しだけ。
呼ばれてもいない飲み会にいく?
この中編小説は二部仕立になっています。第二部は主人公が呼ばれてもいないのに同級生シモノフの飲み会に参加したときの出来事など、彼が24歳の頃の回想になっています。
読みながら「ええええ??」「おいおい!」「なんで?」と思わず声に出して突っ込みたくなる場面が満載です。ものすごい矛盾しまくっているんだけど、それがカッチリと客観的に描き出されているから、主人公の苦痛が、読者にはむしろ滑稽に感じられてきます。
俺は、かっとなったが、熱くなりながらも、ずっと昔からシモノフには十五ルーブルの借金があることを思い出した。もっともこの借金のことは、片時も忘れたことはないのだが、さりとて決して返そうともしていなかったのだ。
「地下室の手記」 (光文社古典新訳文庫) ドストエフスキー (著), 安岡 治子 (翻訳)
15ルーブルは15,000円くらいでしょうか?地下室男さん、返そうよ。。。せめて悪いなっていう気持ちくらいは、持っていて欲しいな、と思うんです。が、むしろシモノフくんを見下している。。。なぜだ、なぜそうなる??
<ああ、俺がどれほど思想にも感情にも優れ、どれほど知的に成熟しているか、それをお前たち(シモノフら友人のこと)がわかってさえくれたらなあ!>ときには俺は仇敵どもが座っているソファのほうしに、心の中でそう呼びかけながら考えた。
「地下室の手記」 (光文社古典新訳文庫) ドストエフスキー (著), 安岡 治子 (翻訳)
厚顔無恥なんだけど、繊細で病的なキャラクターは、こうして描く、というお手本になりそう。自分には理解できない思考回路の人間も存在することを知る教材にはうってつけ。
今日も読んでくださってありがとうございます。
明日もどうぞよろしくお願いします。
参考
ひきこもり回想録『地下室の手記』
ドスト作品中の貨幣価値考察 (ブログ:アンテクと駅長)
・親戚の遺産 6000p=600万円
・豪華な食事代 7p=7000円
・馬車代 50k=500円
・運命の5ルーブル=5000円
参加者(2名)と共有予定の本
世間から軽蔑され虫けらのように扱われた男は、自分を笑った世界を笑い返すため、自意識という「地下室」に潜る。世の中を怒り、憎み、攻撃し、そして後悔の念からもがき苦しむ、中年の元小官吏のモノローグ。終わりのない絶望と戦う人間の姿が、ここにある。後の5大長編へとつながる重要作品であり、著者の思想が反映された主人公の苦悩をリアルに描いた決定訳!
<内容:アマゾン商品説明より> 「地下室の手記」 (光文社古典新訳文庫) ドストエフスキー (著), 安岡 治子 (翻訳)
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